清遊の家

「清遊の家」の敷地は、南北に長く、東側と北側が道路に面している。私たちは路地の街・西新小岩に建つ5階建ての建築の各階に、路地を引き込もうと考えた。段々状の各階の東側に広がる板のテラスは、ここに住む人の生活がはみ出す路地である。

テラスには、樹木や草花が植えられ、ベンチやテーブルが配置され、日差しを遮るパーゴラがあり、1日の時間の流れ、季節の移り変わりを感じることができる。

テラスからは街が眺められ、街からは老人の暮らしがかいま見える。老人に、施設に収容されているのではなく、街の中で生きていると感じてほしい。

各階のテラスは2カ所の外階段で、上下につながる。老人は自由に外を上下できて、一番下まで降りればそこはもう街。地域の人々や家族が外階段を通って上がってくる。1階に同居する保育園の園児がやって来てテラスの植物の世話をする。このように室内の廊下ばかりでなく、外の路地によって、街と建物が連続する。 東から西に向かって段々状に積み重なる建築は、東側に広がる低層住宅群が盛り上がって連続するかのように見え、街と建築の一体感が生まれている。

所在地: 東京都葛飾区

用途:特別養護老人ホーム・デイサービスセンター・保育所

延床面積:4980㎡     

構造・階数:RC造/地上5階地下1階

協力:汀造園設計事務所(植栽設計)

竣工:1998年