東京多摩学園

栃木県にある知的障害者の施設「こころみ学園」に子どもを入園させている山下更生さんから、自分たちも「こころみ学園」のような施設をつくりたいと相談を受けた。さっそく私たちも「こころみ学園」に体験入園した。農を生業とする彼らと生活を共にして、彼らの生き様から多くのことを学んだ。山下さんがようやく探しあてた敷地は、奥多摩の山林だった。

三つの水平面をつくる

この土地で最も必要としたのは、水平面と山を留める土留めである。必然的に形は段々の3つの水平面となる。里山の下草刈り、枝払いという人間の行為が美しい自然をつくり、それが多様な生物の棲家をつくる。三つの水平面は自然と闘おうとはしない。里山の整備と同じことをして、その場所がより使いやすく、雑多な自然となることを目指している。

自力建設

この施設を建設するにあたり、足りないものはボランティアの労力によって補われた。地元の理事、職員の先生方やこころみ学園の人々、象設計集団をはじめとするTeam ZOOの仲間たち、学生、仲良しの職人さん、さまざまな人たちが駆けつけてくれた。その数は延べ1000人を超えるものとなった。

1988年9月の開園を目指し、時には深夜まで作業が続けられた。さらに連日の雨にたたかれ、厳しい日が続いた。

命を育てる仕事

杉木立の下には十万本の原木が整然と並び、朝日に輝く。原木運びはここの住人たちの仕事だ。急な坂道の上り下りを繰り返した後、テラス(水平面)にもどってくる。ほっと一息。奥多摩特産、柚の森を育て、羊と鶏の世話をするのも彼らの仕事。 多摩学園の住人たちは、知的障害者と呼ばれる。障害とは一般に、乗り越えるべき「故障」を指す。だが、実はここの住人たちは障害者ではあるが、それ故に、もっとも個性的な人々だ。個性を生かした総合力によって、「自分たちの身体も含めた自然」を、より美しいモノに造り変えている人々だ。

所在地:東京都西多摩郡奥多摩町

用途:精神薄弱者更正施設

延床面積:1,327㎡    

構造・階数:RC造/2階

竣工:1988年9月