冬山河に始まる
蘭陽平野は、台湾東北部に位置し、西の2辺は中央山脈と雪山山脈に囲まれ、東は太平洋に開いた扇状地である。
冬山河は、その平野を流れる川の一つである。亜熱帯の森林より湧き出た水は、大小の石がひしめいて、蝶が舞う谷間をくぐり抜け、山すその村で人々の生活を潤し、平野部に達する。この辺りから川幅は広くなり、支流のあちこちにはにぎやかなアヒルの養殖所がみられ、下流では一面のエビの養殖池が広がる。多くの種類の野鳥たちも集まってくる。そんな田園風景のなかを、この川はゆったりと流れ、雄大な太平洋に注ぎ込む。
この間わずか12.5kmの流域ではあるが、冬山河というひとつの環境単位としてとらえると、人と自然のおりなす宇宙かそこにあることがわかる。
私たちの台湾での活動は、この冬山河から始まった。
冬山河水態博物園全体計画
冬山河の計画は,河の上流から下流までの河一本とその流域を含めた12.5㎞の地域の人々と水のかかわりを幅広く理解するための環境、すなわちこの地域全体を一個の水態博物園とみなし、それをもとに流域全体の緑化保育、かつ観光資源として有効な活用を図っていくことを目的としている。
この計画は川の特性により五つの区域に分けられ、その主な活動の中心として3拠点を設定する。
A拠点:冬山河上流部
水源に近く森林の保育に有利であることから、森林公園としての機能をもたせる。
B拠点:冬山河中流部
双龍区、親水公園、水上運動訓練中心からなり、冬山河計画の中心的拠点である。
レガッタや龍舟など、水上スポーツの国際的な大会を誘致するための護岸整備、選手育成のためのトレーニングセンターと野外運動施設、舟の収納を目的とするボートハウス、水態博物園の紹介を行うビジターセンタ-、親水活動のための渉水池と親水遊戯区、サービスセンター、サイクリングセンターなどからなる。
C拠点:冬山河下流部
ここでは、民間およぴ第3セクターによる宿泊施設、レストラン、マリーナを既存の集落に組み込む形で誘導していく。
A、B、Cの拠点は、河川上のの水上バス、そして緑道上の車両、自転車、歩行系などのネットワークで結ぶ。
現在、A拠点: 冬山河森林公園「生態緑舟」は、宜蘭縣の環境教育の場として、B拠点:冬山河親水公園はドラゴンボートレースや水上スポーツ拠点として、C拠点:伝統芸術センターは宜蘭の伝統文化の拠点として、宜蘭縣内外から親しまれている。また、近年、 冬山河森林公園「生態緑舟」が完成したことにより、3拠点を結ぶ水上バスの整備や自転車道の整備が進んでいる。
所在地: 台湾宜蘭縣五結郷
用途:公園
延床面積:計7288㎡
公園面積:14.5ha
構造・階数:ビジターセンター RC造/1階、艇庫 RC造/2階、管理棟 RC造/一部2階
協力:中冶環境造形顧問有限公司、高而潘(顧問建築師)、日商日亞高野景觀規劃股份有限公司台灣分公司
竣工:1994年6月
1991年 臺灣仰山文教基金會噶瑪蘭獎
1993年 臺灣建築師雜誌 -國際合作優良設計獎