1999年9月21日、南投縣埔里鎮を中心にマグニチュード7.3の大地震が台湾を襲う。山は割れ、道路は分断し、橋は崩れ落ちた。被害は台湾全土におよんだ。埔里鎮にある水尾小学校も全壊した。「新故郷基金委員会」がつくられ、南投縣内の学校再建に向けて動き出す。地震からおよそ六カ月後、この組織から依頼がくる。
埔里鎮は、台湾のほぼ中央に位置し、人口約八万六千人。山あいには小さな小学校がたくさんある。小学校は人々にとって、子どもたちの教育の場であるばかりでなく、地域社会の中心として人々に親しまれている。郊外にある水尾小学校は、一学年一クラスと幼稚園、児童数は園児を含め九十九人、教員数十人という小さな学校。学区内の親たちは大方農業に従事している。気候は温暖で、土地は肥沃である。主な農産物は、米、野菜、果物、サトウキビ、ビンロウ、花。
地震後、我々が訪れた時、木立の間にビニールシートを張り、その下で授業が行われていた。青空教室。これが本来の教室の姿だ。
地域の心、水辺の楽園-設計方針
1.自然との共生、自然と向き合い、自然を愛する
水と緑に満ち溢れた森の学校
2.地方風土と気候の融合
十分な日陰や空気の流れ、健康で安全な学習環境
3.多様な空間感と特徴のある場所をつくる
回廊、庭、池、歩道、階段など異なる形の空間領域の創造
4.五感の体験
異なる季節、異なるスケール、材質や素材
5.場所の連続性
室内から半屋外、屋外へ。教室から校舎、地域へ。各種多層的な交流域
所在地: 台湾南投県埔里鎮
用途:学校
延床面積:2426㎡
構造・階数:RC造/2階
協力:甘銘源(顧問建築師)
竣工:2001年8月
2002年 遠東建築獎「九二一校園重特別獎」-第二名