「おひさま くるめようちえん」は、福岡県久留米市に建つ幼稚園である。創立115年を迎えた歴史ある幼稚園で、新園舎への建て替えとともに幼稚園型認定こども園に移行をした。子どもたちの自発性・自主性を尊重し、日常の遊びを通じた体験から、自ら学び成長していくことを大切にしている。
3つの「家」
新園舎は3つの「家」からなる分棟形式とした。管理部門の「大人の家」、乳児の「小さなおうち」、幼児の「大きないえ」。
外とつながる
保育室同士の行き来のため、それぞれの「家」をデッキでつないだ。外気に開放されているが屋根があり室内的に使うこともできる。ただの動線ではない、あいまいな場所。デッキからは敷地を南北に貫く中庭に出ることができ、自然と屋内から屋外へとつながる。
適材適所の計画
「大きないえ」は、木の柱梁を現し、木造の良さを最大限に活かす計画とした。子どもや家具の拠りどころになる磨き丸太柱を建てた和小屋組み。勾配天井を活かし、高窓から光を取り込むダイナミックな場所、天井の低い落ち着いた畳コーナー。
「小さなおうち」は、木板の腰壁、無垢材の木製建具や家具を使い、木を感じることができる温かい空間。
筑後で育つ子どもたち
敷地は暴れ川として知られる筑後川の近くに位置しており、雨季には水害の危機に晒される。冠水対策のために床面を地盤から1.0m高く設定、中庭には、筑後川を模して蛇行した細い川を作った。屋根に降った雨水を地中埋設タンクに貯めて、井戸ポンプから流す仕組みだ。
地元の要素や幼稚園の教育理念をさまざま取り入れた「ここにしかない」園舎になった。木造園舎と豊かな園庭からなる多様な空間が、日々の暮らしのなかで子どもたちの発見や学びのきっかけになり、筑後平野ならではの感性を身につけた子どもたちが育つことを願っている。
所在地: 福岡県久留米市
用途:幼稚園型認定こども園
延床面積:1792m2
構造・階数:木造、1階(一部2階)
協力:舟建築設計 松延剛
竣工:2020年10月
2022年第8回福岡県木造・木質化建築賞 木質化の部・大賞受賞