沖縄における建築とは何か、市庁舎はどうあるべきかという、コンペの課題に対して、次の様なテーマを設定し、それから形姿としての解答を導き出した。
◆新しい市庁舎のあり方を求める。
庁舎が真に市民に対して開かれたものであるためには、使う人々の生活環境との連続性を確保しなければならない。前面の芝生の広場から、テラス、ロビー、事務室へと、内と外を連続させる。広場や各階にあるアサギ・テラスは、いつでも、だれでも利用できる空間とする。庁舎の中に、街の一部が入り込むのである。
◆沖縄の気候、風土を捉える。
亜熱帯特有の気温、湿度、風の強さや向き、光の強さ、光の射し方、陰のでき方などをデータとしてだけでなく体で感じとることが必要である。街の中を歩いていると、快適な環境をつくるための工夫や知恵を発見することができる。それらをうまく建物の中に生かすことが重要である。アサギ型ルーバー、花ブロックのスクリーンなどによる遮光、最上階の土による断熱、風のみちによる通風、夜の放熱などの工夫。これらは、地域の持つ潜在的な資源の活用である。
◆沖縄の質感を表現する。
農村や都市は、コンクリート、コンクリート・ブロック、土、木、緑などの素材によって覆われている。
それらの混在した沖縄の質感を映し出すこと。戦後、ものすごい勢いで普及したコンクリート・ブロックを主な材料とし、その多様な使い方を学ぶこと。
それは、圧倒的量で、都市を埋めている材料であり。その技術は極めて進んだものがある。柱のブロック、花ブロック、平板ブロック等の使用は、その技術的ストックがあってはじめて可能であった。
名護市庁舎は、竣工後4年を経て、真の意味で地方自治の拠点として生きつづけ、風景の中に溶け込んでいる。
2019年3月、南側壁面にちょこんと座っていた56体のシーサーは、安全性の観点からすべて撤去された。
所在地: 沖縄県名護市
用途:市庁舎
延床面積:6149㎡
構造・階数:RC造/3階
協力:アトリエモビル
竣工:1981年6月
1982年 日本建築学会賞
2011年 第10回日本建築家協会25年賞