今帰仁村中央公民館

コンクリートブロックで化粧された500角、2,250mスパン、277本の列柱、RC打放しの大屋根、分舎的に配置された各室または、各室を取りまいた柱によってできるアマハジという部分や、大屋根と柱だけで構成される小広場―沖縄古来の建築物でアサギがこれに似ている―など、内とも外ともつかない空間を生み出している。またここは内部と外部との連続性を強めているともいえる。人びとはここで飲み会、討論会、昼寝、展示会、大工仕事、ピンボン‥‥‥など、多彩な活動を繰り広げる。たとえば中庭で祭が催される時など、料理講習室は屋台、和室は準備・控室、講習室は室内休憩所、アマハジやアサギ的小広場は縁日の参道のような場として機能する。また大ホールでの結婚式、講習会や和室での討論会、図書室での読書で疲れた体や頭を休めるには、この半外部的空間はもってこいの場所である。このようにあいまいな空間の存在は人びとの多様な活動に対応し、建物の内部と外部というふうに区分けして考えることを不可能にしている。

われわれは、この公民館で建物を彩るべくさまざまな方法を試みている。大屋根一面を覆ったパーゴラに這わせたウッドローズやブーゲンビリアは季節の表情を豊かに彩り、乙羽岳からの緑の連続と捉えられ、新たな町への緑のスプロール拠点のようだ。床に屋根裏に軒先や梁に埋め込まれた貝がら模様は、潮風とともに海のざわめきを伝え、ひとつひとつ埋め込んで行く村民の手つきや顔つきまで伝えてくれる。日時計や列柱は1日の太陽の動きを的確に捉え、建物に深い陰影を与える。バーゴラの頂上で軽やかに動き回るアルミ製の山バトは、季節風のありかや夕涼み用の風の方向を教えてくれる。中庭に立てられた3本の柱は、中庭をも内部的に機能させ、また野外劇場の舞台づくりに利用される。大屋根に星座の形に打ち込んだガラスブロックは夜空の満天の星を連想させるだけではなく、昼には淡い光を室内に落としてくれる。

こういった手法で外部を内部に引き込むことにより内部空間は無限に外に向かって拡がって行く。

所在地: 沖縄県今帰仁村

用途:公民館

延床面積:716㎡

構造・階数:RC造/1階

協力:アトリエモビル

竣工:1975年10月

1977年 芸術選奨文部大臣新人賞(美術部門)