建築的公園化 / 建築的親民化 / 建築的土着化
1988年、時の縣長(知事)陳定南が縣庁舎を建設するにあたり、私たちに示したコンセプトである。
公園のように緑や水にあふれ、いつでも人々の出入りが自由で、居丈高でなく、人々に親しまれ、地域を表現している縣庁舎、ということだ。それは私たちが最も表現したい建築であり、「建築の自由とはなにか?」の問いかけであった。
当時の台湾は、急激な民主化が始まり、「新しい世界に変えていくぞ、自由を獲得していくぞ」という気運にあふれていた。建築もまた、杓子定規のコンセプトに沿った、安っぽいトレンドものではなく、建築が生命をもち、矛盾、葛藤を恐れず、好奇心、闘争心を呼び起こすものではなくてはならないと考えた。
縣庁舎の設計は1988年に始まり、隣接する縣議場、縣史館、中央公園へと続いた。これら建築が集中する地区は宜蘭縣政中心と呼ばれている。それぞれの建築は、台湾の変動の時代を映しながら、2004年、一応の完成をみる。
年月が経ち、縣議場の増築、台風の被害による補修や、中央公園の改修などが行われたが、未だ21ある出入口から人々は自由に出入りし、中庭の水池、風の通り抜けるエントランスホール、2階テラスやパーゴラの下などで思い思いの時間を過ごしている。 建物は緑に覆われ、周辺の樹木も成長し、森の中の縣庁舎という風情である。
所在地: 台湾宜蘭縣
用途:県庁舎
延床面積:22768㎡
構造・階数:RC造/地上4階地下1階
協力:高而潘(顧問建築師)、日商日亞高野景觀規劃股份有限公司台灣分公司(植栽設計)、ペーパースタジオ(サイン計画)
竣工:1997年
2003年 台灣第一屆優良綠建築設計獎 -貢獻獎