場づくりは、人づくりだ。
集団生活の中で、子供と先生一人ひとりが、のびのび生き生き活動できる空間をつくること。この目標のもとに、次の計画方針がある。
土地の特性を生かす
ここにしかない独特な空間。それは自分たちの学校となるだろう。
敷地は関東平野の真ん中。鉄道沿いの市街地と、農家の屋敷林が点在する美しい田園地帯からなる宮代町。
田園側のエッジにあって、市街地からのアイ・ストップとなる小学校を、大きな屋敷林にしよう。
この屋敷林の中に、民家の構成にも似た建物群、表庭、裏庭。表庭から、それぞれの建物にいつでも気楽に入れること。
多様な空間
さまざまな部分が個性をもち、子供たちは自分の場をもつ。自分だけの秘密の柱。位置感、方向感をもち、外から自分の部屋がすぐわかる嬉しさ。
大きなグラウンド、芝生の中庭、小さな裏庭、外廊下、教室、小さなアルコーブ、柱の段々など、スケールの変化。
学習、遊び、運動、食事、散歩、製作、発表など、個人の、そしてグループによるさまざまな活動が誘発されるような多様な空間。
五感に訴える
幼少期、人の感性は最も鮮やかに働く。
光、風の向き、水の冷たさ、樹木の色の変化によって方向を知り、季節を知る。足の裏の感覚で素材を理解する。体の感覚で、形、大きさを感じる。鳥や虫、木の実と親しくつきあう。静かな場所で物思いにふける。
このようなことができる空間を用意することだ。
あいまいもこ
外から内へ、内から外へ、子供たちの心と体が自由に移動する。
内部化される外部、もう一つの部屋―中庭、裏庭。屋外一半屋外一屋内がとけ合ってひとつの場所=世界が生まれる。
所在地: 埼玉県宮代町
用途:学校
延床面積:7129㎡
構造・階数:RC造/2階
竣工:1982年3月